1989.9月「ROCKIN'ON JAPAN」岡村靖幸20000字インタビュー 第5回 |
青春って1.2.3ジャンプ! 思春期へ・・・
岡村靖幸20000字インタビュー 「自分がアウトサイダーになるのが恐かった」
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◆どこに行っても、すぐその土地に慣れちゃうのかな?
「・・・この後もずっと引っ越しが続くんだけど、そろそろ思春期に入るでしょ、そうするとやっぱり色々あるよね。引っ越すの嫌だなあ、とか当然そういうのはありますよ」
◆大宰府の次はどこに行ったんですか。
「今度はね・・・大阪に行ったんじゃないかな。
大阪で1年暮らして、それから新潟に行ったんじゃないかな」
◆じゃ、新潟に行ったのは中学校1年生ぐらい?
「うん、そうかな」
◆一番行きたくないなぁって思って行ったのが新潟だった?
「いや、一番嫌だったのはね、新潟行って、また大阪に戻るの。
で、そこからまた新潟に戻るの。それが一番嫌だった」
◆どうして?
「やっぱ、もう中学生だから、別れる時はもうほんと、『バイバーイ、必ず手紙書くよーっ』って感じで。
で、大阪行って、1年位でまた新潟に戻ってきちゃったから、しかも、同じ中学に戻ってきたから、『何しに来たの?』みたいな感じで」
◆(笑)みんなしらけ返ってたんだ?
「結構みんなクールになってた(笑)。『あぁ、また来たのォ』みたいな。それが一番嫌だった」
◆(笑)。しかし、そんなに引っ越しが多いなんて、たいへんな仕事ですね、お父さんも。
そういうことについてはちゃんと理解示してましたか、子供ながらに。
「うーん、ていうかね、お父さんはその・・・結構偉そうな人だったから。
偉そうなこと言う人は偉いんだろうなって思ってたから、ずっと」
◆反抗したりはしなかったんだ?
「そうね、中学ぐらいからは普通の反抗期に入ったけど・・・」
◆で、いわゆる衝撃的な音楽体験というか、音楽って自分にとって重要なんだって思うきっかけになったのは何ですか。
「・・・・・・・・・・・・重要だって思うきっかけねぇ」
◆それはもっと後になってからのことなの?
「ずーっと後じゃないかなぁ」
◆あ、ほんとに?中学ぐらいでも洋楽とか聴いてる子とかいるでしょ。
そういう子じゃなかったんですか。
「全然違う。いわゆるベストテン番組とか観てたから。ただ、幸福だったのは、僕が中学の頃にベストテンに出てたのが歌謡曲ばっかりじゃなかったことでね。ゴダイゴも出てたし、サザンオールスターズも出てたし、ツイストも出てたし、原田真二も出てたの。で、音楽も良かったの。いい曲書くなぁって思ってた。世良公則もいいと思ったし、原田真二もすごいなぁって思ったしね。レコードも買ったしね、その人たちの。」
◆でも、とりあえずそれは、普通に人気があるものを自分も好きで聴いてただけで、周りの人たちと全く同じですよね。
「そうそう」
◆そうすると、「俺は他人と違うものを聴いてるんだぞ」っていうんで得意になってたことっていうのは、ほとんど無いんですか。
「生まれて一度も無いかな」
◆やっぱ、そうなんだ。
「だって、ブルース・スプリングスティーンちゃんと聴き始めたの去年だもん。『明日なき暴走』ってすげぇいいじゃん、みたいなのって去年だもん。そりゃあすごいですよ、言っとくけど。自慢しちゃいけないか(笑)」
◆(笑)じゃあ、初めての洋楽体験っていつなんですか。
「すっごい遅い。だから高校の中頃。高校2年生ぐらいになると、もう受験勉強しなくちゃいけないでしょ。でも、僕、大学行かないってもう決めてたから、受験勉強しなくていいから、時間が物凄いあるわけ。それで、かつ、就職用の勉強もしなかったの。だから、その間に、ビートルズを全部聴いたら今度はポール・マッカートニー聴いてみようとか、ジョン・レノン聴いてみようとかって感じで」
◆普通さ、ミュージシャンは洋楽に対して早熟でしょう。例えば小学校5年生ぐらいの時にビートルズを聴いてショックを受けた、とかさ。そういうのは全く無かったみたいですね。
「無い」
◆高校2年で洋楽聴いてても、全然普通ですもんね。周りの人と同じですよね。
「だって、今だってそうだもん、僕。今でも人気あるバンドとか全然聴いたことないもん」
◆しかし、それでよくあんな音楽作れるねぇ。
「だから、最近、それじゃよくないなって思ってね、ブルース・スプリングスティーンは去年、全部買ったしね。んで、やっぱ有名どころは全部聴かなきゃいけないってことで、プログレとかもね、イエスの『危機』とか買ったし、『クリムゾン・キングの宮殿』も買ったし」
◆遅いっつーの(笑)。
「でもね、去年はすっごい勉強したの。色々買ったよ。トッド・ラングレンも流行ってたから買ったし、ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンとかもね全部買ったの」
◆そうすると、自分の音楽的な才能とか素養ってどこで築かれたわけ?
「大学行かないって決めてからの、高校2年と3年の2年間っていうのは、普通の大学生くらいヒマだったんですよ。そこでね、フォーク・ギター弾いたりとかね、ベースとかキーボードとか4チャンのMTRとか買ってきたりとかしたのね。
ていうのは、当時好きだったのが、さっきも言ったけど、ビートルズで、アルバムのライナー・ノーツに、この曲はポールが1人で全部演奏してるとかって解説が書いてあるわけ。
で、こりゃ、すげえとか思って。全部1人でやるっていうスタイルがすっげえ格好いいって思ったの。んで、ビートルズでもヘビ・メタでもそうだけど、その人を好きになると、その人とおんなじことしたくなるでしょ。ビートルズが好きならマッシュルーム・カット、ヘビ・メタが好きなら金髪にしたくなるのと同じで、ポールみたいに1人で全部演奏するやつをやりたいなあて思ったの、ミーハー心で。
だから、弾けなくてもいいからベースも買って、キーボードも買って、MTRも買って、で、多重録音とかしてたの」
◆へえー。
「で、その頃ね、プリンスとかも好きになってね。プリンスが人気出る、一歩前ぐらいかな」
◆いつ頃?
「『1999』の頃。なんかのビデオ番組に出ててね、こりゃ格好いいなあって思ってね。で、レコード買ったら、これがまた、全部自分でやってんの。
んで、『これだ!』って思ってね。よく家でやってた」
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・・・あぁ、私 洋楽に激ヨワイんですよ。
だから、その有名どころを買って、インタビュアーの方に「遅いっつーの」と突っこまれてるのとかもいまいちよくわかりません。。。
「俺は他人と違うものを聴いてるんだぞ」~
「生まれて一度も無いかな」
・・・私なんてありまくり。。。
うーん、今はあんまり無いですけどね。
自分だけ違うものの優越感みたいなのがあったなぁ、昔は。。。
あ~私ってやっぱり凡人。わかってたけど再確認でした。